これまでと、これからと

私の今までと、これからの記録。主に父への片道の手紙です。

前日のこと(2014,12,12)

朝の8時にヘルパーさんから電話がきた時、私は日光に向かっていました。

久々の家族旅行で、一泊の予定で鬼怒川に遊びに行く、その車中だったんです。


電話の話によると…


ヘルパーさんが何度インターホンを鳴らしても応答はなく、ドアのロックがされているので、合鍵があっても中に入れない状態と。


あきらかに、誰のことも家に入れたくないという、父の意思表示でした。


それにしても…


怒ると暴言を吐いて、しばらく殻に閉じこもるのは、毎度毎度のことだったので、うんざりはするものの、驚きはしませんでしたが…家族以外の人までをも巻き込むのは初めてのこと。


ここで何かがおかしいと気がついて、誰かが泊まり込んだりしていれば、翌日あんなことにはならなかったかもしれない…。


いや、泊まり込んでいたなら、もっと悲劇的なことが起こっていたかもしれないかな…。


間も無く、ケアマネさんが到着して、呼びかけても反応はなく…


インターホンを鳴らしては、女の人ふたりが名前を呼び続け、玄関ドアを叩き…そんな騒ぎを見て、次第に近所の人が集まり始めたそうです。


実家近辺はとても住民の結びつきが強い地域だと思います。
子ども会なんかの町内会の活動も、お祭りなんかも盛んで、若い頃から一緒に活動するからか、年をとっても交流は続いていて…父の年代になると亡くなった方も多いですが、父も近所に仲間は多かったです。


本当に心配して見に来てくれた人もいれば、騒ぎを見たくて 近づいて来た人もいたと思います。
10人近くが、実家の周りを囲んでいたそうです。


同じ都内に住んでいる姉が実家に向かっていましたが、まだ到着していませんでした。


だから私が、逐一、ケアマネさんや、二軒隣に住んでいた民生委員の方と連絡を取り合って、しばらくインターホンでの呼びかけと、玄関ドアを叩いての呼びかけをしてもらっていたんですけど…


9時半近くなって、民生委員の方から電話で言われました。


「玄関のドアのロック、壊してもいい?」


とにかく、中で倒れていたりしたら、一刻を争うからと言われ、私は承諾しました。


近所で働いている男性が、会社から工具を持って来て、ロックの部分を壊したそうです。


家の中に入ってみると、父は布団の中にいました。


耳元で名前を呼んでも、ゆすっても起きなかったため…その場にいた全員が「意識がない」と思ったとのことでした。


「お父様、意識がないようなので、救急車を呼びますね!」


姉が到着したのは、救急車が着いた頃でした。
姉の家でも、部活へ行った長女が学校で熱を出して倒れたらしく、その迎えもあったりで、出足が遅れてしまったとのことでした。


「これでまた仮病だったら、本当に許さないんだから!!」


姉は、朝、一番に連絡をした時からずっと、仮病じゃないか、ただ、ふて寝をしてるだけじゃないかと言って怒っていました。


そう……


そう姉が怒って言う程に、私たち姉妹は、父の仮病にずっと振り回されてきたのでした。


風邪を引いたようで具合が悪い。
息が苦しい。もう俺はダメかもしれない…。


さっき、椅子に乗って探し物をしていたら落ちた。
動けなくなった。もうダメかもしれない…。


そんな連絡がくる度に、私たちは実家に駆けつけました。
私は、片道2時間かけて。


いつもお世話になっていた看護ステーションに緊急連絡を入れて、来られる看護士さんに来てもらって…看護士さんの判断だけでは、持病もあることだし心配だからと、救急車を呼んでかかりつけの病院に運んでもらって…


信じられないことに、毎回仮病でした。


だから、姉が怒るのも無理のないこと。でも、今回は本当に脱水症か何かかもしれない。


病院へは姉に付き添って行ってもらうことにして、私たちは、病院での結果がわかるまで、そのまま鬼怒川で子どもたちを遊ばせていようということになりました。


そして…


数時間後、姉から妙にトーンの低い声で連絡がきました。


「やっぱり仮病だったよ」と。


やっぱりか…でも、何だか、姉の様子がおかしい。もっと怒っていていいはずなのに…。


父は、病院に入った時は寝ているような、意識がないような感じだったけれど…検査が終わって、仮病だとわかって、次に会った時は、看護士さん相手に暴言を吐いていたそうです。


「俺はただ寝ていただけだったんだ!なのに、あの女が俺の家の、俺の部屋の壁を叩いたり、蹴飛ばしたり、大きな声で奇声をあげておどかしたりしたんだ!救急車なんて呼びやがって!あの女を捕まえろ!」


あの女…とは、ケアマネさんのことです。
ケアマネさんは、父の部屋の壁を叩いたり、蹴飛ばしたり、奇声をあげたりなんか、もちろんしていません。


妄想がエスカレートしてる…
ここでもっとそのことを深刻に受け止めなきゃいけなかったんです。
今思えば。


でも、何度も言うように、怒って、妄想まじりの暴言を吐いて、殻に閉じこもって、しばらくすると、すがるように頼ってくる…


もう、何百回も…私たちは、子どもの頃からそんな父を相手にしてきたので、確かに今回は酷いな…とは思ったけれど、そのまま精神科を受診させるとか、そんな考えは、少しも浮かんできませんでした。


今回は酷い…


父は、姉の姿を見つけるなり、ものすごい剣幕で話し始めたそうです。


「俺を捨てておいて、今更何しに来たのか」と…。
「娘のような顔をするんじゃない、この、鬼が!」と…。


姉は、そう言われてショックだったのか、受け止めきれなかったのか、電話で私に、言いました。


「お父さんは、やっぱりあんたたちが引っ越していったことが寂しかったんだよ。捨てられたって言ってたよ!どうすんの⁈」

 


もう、このあたりのことから、思い出すのがキツイ。


私は、父のことを捨てたんじゃない。
姉も、その事情はよくわかっていたはずなのに…。

 

 

そう


ちょうど、約3年前まで、私たち一家は父と同居していました。
同居は、10年に及んでいました。


同居を解消することになった理由は、ひとつではありません。


本当にいろいろな理由があって…やむなく私たちは引っ越しました。


できることなら私だって、子どもたちだって、あのまま、あの街で暮らしていたかった…。

 

 

 

 

凄く長くなりそうなので、一旦ここで切ります。

 

 

 

私は、何のために、こうして、こんな辛い記憶を掘り返して書いているんだろう。


わからなくなってきた。


でも、ひとつだけ言えることは…


ひとりで抱えていることが、辛いんだってこと。


自分で自分をカウンセリングするように、これからも少しずつ書いていきます。