これまでと、これからと

私の今までと、これからの記録。主に父への片道の手紙です。

お母さん、ごめんね(2014,10,12)

さて、続きは、母が最後に倒れて、危篤になったところからですね

 

病院のICUに駆けつけたとき、母は既に、意識がなく、人工呼吸器に繋がれていました

病院のトイレで発作を起こして倒れたとのことでした

 

「お母さん、もう、頭の中は天国に行っちゃってるんだって…」

父は、私にわかるようにそんな言葉で説明してくれました

すでに、脳死だったんですね

 

心拍数を表すモニターの画面を見ながら、私は不思議な気持ちになったのを憶えています

身体は生きているのに
頭の中は死んでいる
全く理解できない


人の身体が部分的に死ぬということがわからなかった
身体が生きてるんだから、まだ大丈夫なんだよね?
頭だって、なんとかなるよね?


そんなことを思いながら
リズミカルな心拍の波形を見ていました

そして、その波形が波立たなくなり
直線になる様子を想像して、怖くなって、ICUを出ました

 

ドラマみたいだけど
これは、ドラマじゃないんだな
人工呼吸器って、あんな風に体を切って、管を入れるのか
すごく痛そうだな
トイレで倒れたのか
お母さんが最後にみた景色は、トイレだったのか、なんか、かわいそうだな…


何故か、その日の夕方に病院の窓から見た夕焼けを、鮮明に憶えています
時間は、午後の4時半くらいでした

まだこんな時間なのに、もうこんなに暗い…

11月の始めの頃って、どのくらい日が短くなったっけ?と思う時、今でもあの日の夕焼けを思い出します

 

その日は病院に泊まって

2週間後に母が亡くなるまで
何度も病院から呼び出しがあって、私も学校へ行ったり行かなかったりでした


一度、夜中に電話があった時は、本当に怖かった

心臓が止まったから来て下さいっていう電話だったと、大人になってから聞きました

 

その時父は、寝ている私に声をかけず、姉だけを連れて病院に行ったんです

私は、電話の呼び出し音にびっくりして、起きていました
でも、寝たふりをしていました

 

あの時、父に声をかけていれば、連れて行ってくれたのかな

何故、置いていかれたのか
母はやっぱり死んでしまうのか

すごく雨が強く降っていた夜で
家に残された寂しさと、雨の音の凄さと、死というものを想像して…
身体がブルブル震えて
朝まで一睡もできませんでした


それから数日後に、母は亡くなりました


たまたま父が病院に行っている間に心臓が止まって
父は姉の高校に連絡をして、姉が駆けつけるまでは蘇生の処置がされていたみたいです

でも、そのまま、母の心臓は再び動くことはなく…


その日、私は風邪をひいて熱があったので、学校を休んで家にいました

昼過ぎ頃に「亡くなった」と電話が入った時、「ついにこの日がきたな」と思ったけれど、凄く冷静でした

 

どうしてかな

 

死というものが訪れる前は、あんなに怖かったのに
死が訪れてしまってからは、怖くも、悲しくもなかった

「お母さん、この家に帰ってくるの?それとも、尾久(母の実家)?」
なんて、祖母に聞いたりして
「うちに帰ってくるに決まってるでしょ!」って、怒られた
「家族なんだから」って…


家族か…
そうだ、そうだったな
あの人は、私のお母さんだったな


あまりに長い入院生活で、
家族であるという実感も失ってしまっていたんです


訃報を聞いた小学校の担任の先生が、家に来てくれた時も
「お母さんが亡くなったと聞いたから、もっと泣いてるかと思ったんですが、落ち着いているのでびっくりしました。一生懸命我慢してるんでしょうね」
と、先生が父に言ってた


先生、違うの
我慢なんかしてないの
悲しくないんだよ


母のいない家が当たり前
うちには母親はいない…


子どもとしては、自然と頭をそんな風に切り替えていかないと、耐えられなかったことだったのかなと思います
母親のいない寂しさに…

 

 

ごめんね、お母さん

 


あなたがどれだけ無念だったかと想像すると、
私たちのことを、どれだけ思ってくれていたんだろうかと想像すると
今は胸が張り裂けそうです

 

それと
どうしても謝りたいこと

脳溢血で右半身マヒしてたお母さんのこと、恥ずかしいと思ってたこともあったの


家の近所の道路で、お母さんが父と歩行練習をしていた時に
「あの人は誰?」
って友達に聞かれて
とっさに「知らない」って答えた私


歩行練習をする2人の後を、車椅子を押しながら歩いて付き添っていた時
向こうから、友達らしき集団が来るのが見えて
慌てて車椅子を放り出して、みんなから見えない位置まで逃げ出した私

 

私は最低の娘です

 

お母さん、ごめんね
本当に、本当に、ごめんね

 

 

 

 

あなたは、どんな人だったんだろう

 


一度でいいから、話がしてみたい…

 

 

 

 


もう少しだけ母を振り返るかもしれません

 

 

今日は、ここまで